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2004/2/1 
大安吉日、しかも風水まで考慮された部屋で、今か今かとキーオープンの結果を待つデーモン山田たち。

固定されたデータベースに、あらかじめ割りふれられていたキーコードを付与し、対照薬(この男性機能不全の治験の場合、先発する有名な薬)と比べて、効果の点で劣っていないことが統計解析上言えればよい。

デーモン山田もヘンリー川崎も、これまで何十回とキーオープンに立ち会ってきた。どんなに大丈夫だと思っていても、緊張してしまう。
過去には、対照薬やプラセボに負けてしまい、その後の幹事の医師たちとの食事会がお通夜のようになったこともある。

そこへぽちりんが明るい顔で入室してきた。大丈夫だったようだ。

早速、解析結果の概略が発表され、非劣性が証明された。

よし、これであとは総括報告書を書いて、申請に向かってやるしかない。
いいタイミングでメディカルライターの経験者が二人も入社してきてくれた。

「金ネックレス付き大黒」と「スナフキン」を中心に総括報告書の仕上げにはいってもらおう。

デーモン山田は、既に町へ繰り出していた。。。
2004/2/2
マラリア原虫由来の「免疫抑制剤」(開発コード)「HORAI-SAS10804」はリウマチに効果がありそうだということで、今年初期にヒトで初めて試す第1相臨床試験(Phase-I)には入りたいところだった。

しかし、先日、あるメーカーのリウマチ薬で重篤な副作用が報告された。
そこで、当社でも非臨床試験を見直している。

ここで開発スケジュールが遅れるのは止むを得ない。
多少、スケジュールが遅れても、市販後に重篤な副作用が多数、報告されたら大変だ。

ただ、製造のスケールアップを目指して、基礎研究所のちゃちゃとるみ子の酒、それに製造部門からはヨネヤマ、十条がプロジェクトを走らせていた。

その中間報告が臨床部門窓口兼コーディネーターのハレ〜からあった

それによると、キーとなる中間体の定量分析方法も確立し、分析バリデーション方法まで作成できたとのことだった。

これでようやく、治験中でも安定した治験薬の供給量が保てそうだ。

製薬会社では、こうして、多くの部署の人たちの協力の上で、仕事が成り立っている。

決して、デーモン山田だけの力では無かった。  ----言うまでもないか。。。
2004/2/3
高血圧の治験が順調にスタートしたが、ある病院からこんなことを言われたとくりこが言ってきた

治験中に発生した有害事象の治療が治験終了後にも続くようなら治験依頼者が支払って欲しい」と。
しかも、その有害事象に対する治療費は「特定療養費制度」にして、治験依頼者が支払うべきだ。とのこと。

ヘンリー川崎「はぁ〜〜?」

スナフキン「『特定療養費』は『治験期間中』だけの話。仮に、その治験終了後にも有害事象にかかった費用を治験依頼者が支払うとするならば『補償』の範囲で、『特定療養費制度』とは無関係じゃないですか?
それに『有害事象』では、ホーライ製薬の『補償のSOP』でも認めていませんよね。『副作用』ならSOPでも支払い可能ですが、『有害事象』全般となると違いますよね。」

ヘンリー川崎「たとえば高血圧の治験中に肺炎になって入院した。その肺炎は治験薬とは因果関係が完全に否定されている。治験終了後も肺炎で入院している。この患者さんの入院費を支払え」ということだな?」

くりこ「そうなんです。」

ヘンリー川崎「デーモン部長は?」

社長秘書「鳥取に出張です。」

ヘンリー川崎「ホーライ社長は?」

社長秘書「いません。きっと今ごろ、ネットの中をさ迷っているはずですよ。」

・・・で、どうするのよ?

みんな〜〜〜! どうする?
2004/2/4
ヘンリー川崎「よし、そこの施設には依頼をやめよう。 一箇所で許すと他でも許すことになるからな。 それに、もしうちが許すと、その病院は「他のメーカーさんにもやってもらっています」と言い出す。」

くりこ「今後はどうします?」

キャサリン立川「『補償と賠償』って、まだ「病院」のほうでは認識が甘いので、当社で作った補償と賠償の手順書を出すと、かえって混乱するという考えもありますが。。。。。」

ヘンリー川崎「いや、逆だよ、その発想は。 相手の認識が甘いうちに、正しいやり方を教えてやろうぜ
まだ、相手がよく物事が分からない、こんな時こそ、こっちのペースに乗せるんだ。 と言っても、こちらはきちんと法的に問題の無いことをやるんだから、業界が全体的にいい方向に向かうと思うな。」

スナフキン「そうですね、国はすぐに賠償責任を逃れようとしますから、国立系の病院は気をつけないといけませんね。」

くりこ「そうそう、過失責任の重大性にかかわらず、賠償は法を犯したほうが行うものだからね。」

キャサリン立川「じゃ、その戦略でいきますか?」

ヘンリー川崎「そうしよう。」
2004/2/5
男性機能不全のPh-Vも終り、無事にキーオープンでも問題の無い結果が出た。

既に一部は記載されていた総括報告書に、今回の結果と考察を「金ネックレス付き大黒」と「スナフキン」がきれいに追加して、まとめてくれた。
ぽちりんも頑張って、解析報告者をまとめてくれた。


この総括報告書を関係部署に回覧し、データの内容、記述内容、不整合などをチェックしてもらう。

各部署で責任を持って確認した内容を二人のメディカルライターで、さらに訂正する。

あとは、この総括報告書を黒丸に提出し、監査を行ってもらうだけだ。

この治験では、すでに7箇所の医療機関へ監査は行っている

その監査対応も終わっているので、この総括報告書の監査さえ終われば、あとは申請資料をまとめて申請できる。


申請日は、やっぱり大安かな?


(フィクションなので、スムーズに作業が進むこと、進むこと。。。。by ホーライ^^;)
2004/2/8
早速、男性機能不全の治験総括報告書に対する「監査報告書」が黒丸から提出された。(ゲストブックの2/7付「監査報告書」参照

監査からの指摘は大きく言って、@文章と表の記述が不一致、A「治験に参加した症例数(FAS)」の数と「安全性採用例(PPS)」と「逸脱例数」の合計数が不一致 の2つだった。

@の指摘については、もう一度よく見直す必要がある。 またAの指摘もよくやるミスだった。

「金ネックレス付き大黒」と「スナフキン」にもう一度確認してもらい次第、監査回答書を作成する。
それで確認が取れれば、監査証明書を黒丸に書いてもらい、この件は終了となる。

あとは、申請に向かっての作業だ。CTDのガイドラインに沿った形で資料をまとめる

特に注意したいのは今回の新薬は「国内の二番手」だということだ。
如何に、先発品との違いをアピールできるかにかかっている
有効性は多分、それほど違いはないだろう。しかし、安全性ではかなり違いが出ている。

特に年齢で分けたときに、上に行くほど、その安全性の差は顕著になって出た。
このあたりをうまくアピールし、市販後に出す添付文書にも反映させたい

JOYママを中心に安全性についてはMT、解析上からはぽちりん、臨床はさら、そしてコーディネーターとしてハレ〜が加わり、4月の申請にむかって概要作成に入ってもらう

ところで、来年度の研修計画はどうなっているだろうか?

ちょっと、カッコ亀井に聞いてみておこう。
2004/2/9
ヘンリー川崎「インフルエンザの治験もどんどんCRF回収が進んでいるね。」

かずさ2号「これまでの傾向を見ると、やはりCRCがきちんとしている病院のCRFは質がいいですね。まず、登録患者さんに問題が無い。」

みっちーK「医師がスクリーニングした患者さんは、他の治験と勘違いしているのか、年齢制限を超えていたり、併用禁止薬を使っている患者さんを登録することがあるのよね。」

BECK「やっぱ、日常診療と治験を一緒にやるのは無理があるっすよねー。」

さら「その点、CRCは治験に専任なので、プロトコール違反が皆無に近いわね。登録違反も無いし、検査もスケジュールとおりやってくれるし。治験薬の服用率もいいわ。」

くりこCRCが細かくスケジュール管理してくれて、電話でも患者さんに連絡してくれるからよね。」

スナフキン「これだったら、多少、高い金額でもCRCの質の高い病院に治験をお願いするよね。だってさ、国立系で治験の研究費は安くても、あとでプロトコール逸脱でデータが採用されないとなると、モニターの人件費まで考えると膨大な損失になるぜ。」


キャサリン立川「デーモン山田部長はは、よくCRCと一緒に食事をしてくるけれど、当然、その手の経費清算は却下よ。」

みっちーK「でも、ホント、これからの治験は治験責任医師の調査よりも、CRCの質を調査するほうが治験に大切ですね。」


お〜〜〜い、聞いていますか〜〜〜?デーモン部長!
2004/2/11
ある病院の薬剤部から電話がかかってきた。

それは、新規の高血圧の治験「HORAI-E±2004Z」(治験薬コード)を依頼している病院だった。

受け取ったBECKが慌てて、リーダーのさらに駆け寄った。

BECK「さらさん、モッキントッシュ病院からなんですが、実は、オープン試験の患者さんにDB試験用の治験薬を間違えて渡したらしいっすよ。」

さら「え!? オープン試験とDBの両方の治験を依頼するところには、十分、気をつけるようにお願いしてあったのに?」

キャサリン立川「ホント〜〜? 信じられない!! だってさ、DBの箱は濃いブルーにして、長期投与のオープン試験用の箱は真っ赤にしたのよ、間違わないようにってさ。」

BECK「それでも、間違えるときは、間違えるっすね。 で、薬剤部長からで、どうしましょうか?ということなんすよ。」

さら「その間違えた患者さんは、もう治験薬を服用したのかしら?」

BECK「えー。間違えたのに気が付いて、慌てて、患者さんに電話したけれど、もう、1回分服用したあとだったそうです。 次の服用はとりあえず、止めるように連絡したらしいっす。」

キャサリン立川「え〜〜と、どっちにエントリーしている人に、どう間違えて渡したんでしったけ?」

BECK「最初から長期投与のオープン試験にエントリーされた患者さんに、DBの治験薬が渡されたんです。」

さら「どうしようかしらね。。。」


その頃、デーモン山田は寒風吹き荒れる網走市でラーメンをすすっていた。

デーモン部長、そんなところで、鼻水をすすりながら、ラーメン食っている場合じゃないぞ〜〜!
2004/2/12
オープン試験の患者さんにDB試験用の治験薬を間違えて渡したという電話が有った。
しかも、患者さんは1回分服用したとのこと。

さら「さて、みんな、どんなことが考えられる?」

BECK「このオープン試験の患者さんを中止、脱落とするかどうか。」

さら「そうね。それが一番大きな問題ね。」

キャサリン立川「DB試験用の薬は、他の患者さんに割り付けられていたのかしら?」

BECK「割り付けられていみたいです。」

キャサリン立川「だったら、そっちの患者さんも、どういう取り扱いになるのかしら?」

さら「それもあるわね。それから?」

BECK間違えて服用した患者さんの安全性は大丈夫っすかね?」

さら「それも、至急考える必要があるわね。」


その頃、デーモン山田は網走でラーメンを食べ終わり、つまようじで「シーハーシーハー」しているところだった。。。。

誰も、デーモン山田に連絡するということは、頭にかすりもしないようだった。
2004/2/15
さら「もし、オープンの患者さんに間違えて渡った治験薬がうちの『HORAI-E±2004Z』だった場合は何を考えればいい?」

BECK「その時は何も問題がないっすよね。オープン試験と同じものを服用したのだから」

さら「そうね。じゃ、逆だったら? オープンの患者さんに『対照薬』の▲▲▲が渡っていたとしたら?」

キャサリン立川「え〜〜と、長期投与試験(オープン試験のほう)のプロトコルでは、併用禁止薬に『対照薬』である▲▲▲が上がっています。つまり、併用禁止薬を服用したことになります。でも、たった1回ですからね。」

さら「併用禁止薬にもなっている▲▲▲とこちらのHORAI-E±2004Zを同時じゃないにしても、併用した時の安全性は?」

BECK「海外でも、実は同じことが起こっていて、この時は1週間間違って服用していたけど、大丈夫だったとのことです。それから、さっき治験責任医師に電話で患者さんの様子を聞いてもらっています。もし体調が少しでもおかしかったら、大至急、病院に来るようにも伝えてもらうよう頼みました。」

さら「了解。 じゃまず、最初にこの患者さんを長期投与試験からドロップアウトさせるべきかどうか決めましょう。」


デーモン山田は網走で木彫りの熊を見つめていた。どれを買おうか迷っているらしい。。。
2004/2/16
さら「OK。じゃ、この患者さんは長期投与試験からドロップアウトしてもらう。理由は『併用禁止薬』を使った恐れがあるから。 その確認のために間違って渡されたダブルブラインドの治験薬のキーはオープンしない。いい?」

BECK「もし、その長期投与試験の患者さんが治験継続を希望したら?」

さら「他の治療法でもコントロール可能なら、ご辞退願いましょう。もし、他の薬ではコントロールできなくて、うちの治験薬でないとダメ、という場合は、今回の経緯を説明し、1回でも併用禁止薬を使ったので治験からは脱落を納得してもらう。その上で、継続投与を希望するなら、プロトコル逸脱例として投与を続けましょう。ただし、その医療機関のIRBで承認してもらう条件付き。それでもダメなら、特別扱いで、医師が全責任を持って投与する。 でも、あくまでも、ご辞退願うのが一番よ。」

BECK「ラジャー。その方向で医師を説得します。」

キャサリン立川ダブルブラインドの患者さんのほうはどうします? 長期投与の患者さんから治験薬を回収して、本来、渡すべきだったダブルブラインドの患者さんに渡しますか?」

さら「それは止めましょう。一旦、患者さんの手に渡った治験薬は管理が十分だったという保証はないからね。最後の2週間分は服用しなかったとして、今、残っている治験薬を渡しましょう。コンプライアンス上、2週間の治験薬未使用は、ギリギリ有効性も安全性もデータは採用よね。」

キャサリン立川「そうです。」

BECK他の病院でも発生しないよう、もう一度、他の病院の治験薬管理者に念押しが必要っすね。

さら「そうね。それがいいわね。お願いするわ。」



その頃、夕闇迫る網走では・・・・・・

「おっちゃん、この木彫りの熊さ、そ、それ!サケを口にくわえているヤツ。2500円だってね。・・・2000円にまからない?  え〜〜!? だめ? じゃぁさ、こっちの1000円のちっこい熊も買うから、合わせて3000円じゃ、どう?」

なんか、違うところで粘り腰を出していないか? デーモン部長!
2004/2/17

かずさ2号「インフルエンザのCRFの訂正って、ややこしいですね。」

ヘンリー川崎「なんで?」

かずさ2号「これは複写式のCRFで、回収後の訂正はDCFでしょ。いちいち前のCRFはどう書いてあって、どうして違うかを医師に説明するのが大変で。」

みっちーK「それはあるわね。ブック型なら、原本に前の記載があるから、それを見ながら説明すればいいんだけれど、DCFの場合は、その該当個所を医師のほうに残っているCRFから探すのが、まず大変。」

スナフキン「それとさ、ブック型は疾患の一連の流れが一目で分かったけれど、visit型は、その流れがつかみ難い! 場合によっては、こちらで一連の流れを、わざわざワードやエクセルで作る場合も有ったりしてね。」

ヘンリー川崎「まぁ、これはもともと医師やモニターが便利になるように作られた訳じゃないからな。医師が記載しだい、そのCRFを1ページずつ回収できて、すぐに会社で入力できるというのが一番のメリットだ。」

かずさ2号「そうですね。昔は治験の終了間際にドワーとCRFを回収して、データの入力なんて、徹夜でやっていましたね。」

みっちーK「今回は、回収がわりとうまくいったから、ぽちりんさんも楽だったんじゃない?」

ぽちりん「そうね。回収が順調だったから、入力も昔のような地獄のピークが無かったわね。」

スナフキン「でも、会社によっては、せっかく複写式のvisit型にしたのに、モニターが回収をさぼって、結局ブック型みたいに、最後にいっきに回収して、結局、入力の手間は変わらないわ、訂正はDCFで大変だわと、デメリットしかなかったところもあると聞くよ。」

デーモン山田「なんでも新しいシステムを導入するときは、きちんと意義を教えてやらないといけないんじゃな」

全員「部長!!」

デーモン山田が机の上で木彫りの熊(大小2頭で3000円也)を磨いていた。

社長秘書「部長から皆さんに、ホワイトチョコのお土産がありますので、ここから自由に持っていってくださいね。」


その頃、そのインフルエンザの治験データをDCFで訂正に行っているくりこには大変なことが起きていた
2004/2/18
インフルエンザの治験データを修正してもらうために、DCFを持ってゴトキン病院に出かけた“くりこ”。

今回の訂正内容は「2月10日のデータでは、被験者は『腹痛』が発生しているが、医師はそれをインフルエンザのため、゛治験薬との因果関係は無し”としたが、同一患者で2月2日に発生した『腹痛・下痢』は、゛治験薬との因果関係を否定できず”となっている。この相互の有害事象に対する因果関係の取扱いに、不整合があるので確認する。」というものだ。

文章の最後まで読むと、もう、最初の文章を忘れてしまいそうなくらい長い指示内容だ。

ゴトキン病院のクックルー宮元医師に、この件を確認に行くのだが、このクックルー宮元医師が、これまた難物ときている。

一度、自分が言ったことは意地でも変えないというタイプだった。

今回の訪問でも、一言目が「なんだ、俺にイチャモンか?」だ。

しかし、くりこは、にこやかな顔で辛抱強く事情を説明した。

くりこ「先生、どうも納得できないんです。同じような有害事象なのに、2日は“因果関係否定できず”なのに、10日のほうは“因果関係無し”というのは。」

クックルー宮元「どうだったかな〜〜? 確かに2月2日のほうは、確かに「因果関係を否定できない」と思ったんだよな。なんで、そう思ったのかな・・・」

くりこ「この治験薬の概要書を見ると“腹痛”というのは、過去には有りません。どうして先生は、そう思われたんでしょうね? 先生のことですから、きっと何か、根拠が有ったとおもうのですが、思い出せませんか?」

クックルー宮元「う・・・・ん」

くりこ「2月2日の腹痛・下痢もインフルエンザの影響ということはありませんか?」

クックルー宮元「う・・・・ん。ちょっとトイレに行ってくる。」

くりこ「はい。」


今夜は長くなりそうだと、くりこは窓の外を見ながら、そう思った。
2004/2/21

すっかり暗闇になった窓を見ていたくりこの背中で大声がした。

クックルー宮元 「なんだ! まだ居たのか?!」

くりこ「はい、まだ居ました。」(にっこり)

クックルー宮元 「きみもしぶといな。」

くりこ「はい、それが取り柄ですから。で、どうでしょう先生、因果関係のほうは?」

クックルー宮元「うん。実は、今、回収した患者のインフルエンザ日誌を読んでいたところだ。ほれ、これだ。」

くりこ「・・・たしかに、治験薬服用の当日の夜から『腹痛と下痢』が書いてありますね。」

クックルー宮元「だろ? 服用直後くらいから、その腹痛と下痢が始まったので、これは関係は否定できないとしたんだ。」

くりこ「では、そちらは否定できないとして、2月10日の腹痛はインフルエンザの影響ですか?」

クックルー宮元「あぁ。こちらは、治験薬も服用が終わって4日もたっているからな。」

くりこ「その頃には、インフルエンザの影響はまだ残っているもんでしょうか?」

クックルー宮元「あるだろうな。熱が下がったとしても、消化器系に影響していることは十分有り得る」

くりこ「では、この2つの有害事象に対する因果関係が一致していないのは、間違いが無いと言うことでよろしいですか?」

クックルー宮元「と、思っていたのだが、わしの大きな勘違いやった!
2004/2/23
クックルー宮元「実は、あの頃、別の会社の治験もやっていてさ、そっちのほうの治験薬の副作用に「腹痛」が有ったのよ。」

くりこ「あ、それで、そちらと勘違いされたのですか?」

クックルー宮元「そうだと思う。」

くりこ「何か、その証拠になるようなものって有りますでしょうか?」

クックルー宮元「なんだよ、わしの言うこと信じられないの?

くりこ「いえ、もちろん信じていますが、こういったことは必ず記録として確認しておかないと、あとでまたあやふやになっても困りますので。それに副作用のことですから。弊社では特に安全性情報には気を使っていますもので。」

クックルー宮元「ふん、そうだな。どれ・・・・」

クックルー宮元が部屋から出て数分後。

クックルー宮元「やっぱりじゃ。同じ頃に別の患者のカルテを見たら、そっちの治験薬で「腹痛」の副作用が出ていた。それと勘違いしたんだな。」

くりこそのカルテは私どもの治験に参加された方のものでは無いので、私が直接見ることはできませんが、間違いなく、それは記載されているということでよろしいですか?」

クックルー宮元「もちろん。ここに俺のきったない字で書いてある。」

くりこ「・・・ということは、こちらの治験に参加されていた患者さんのカルテにあった「治験薬との因果関係は否定できない」というところは訂正可能でしょうか。」

クックルー宮元「あぁ、間違いないな。今、見直したが、この患者は以前から風邪やインフルエンザに罹ると、消化器系がやられる傾向にあることが、カルテからも分かる。」

くりこ「では、その旨をカルテに訂正理由として書いて頂きまして、本日の日付と先生のサインをお願いします。」

クックルー宮元「ほいほい。」

くりこ「あと、こちらのDCFにも同様に記載をお願いします。」

クックルー宮元「今日中に?」

くりこ「できましたら。」

クックルー宮元「きみ、帰れなくなるんじゃない?」

くりこ「いえ、まだ最終便には間に合います。」

クックルー宮元「そうか、ふんだら、やるわいな。」


そのころ、デーモン部長は新橋駅から「汐留シオサイト」にある「日テレの不思議なオブジェ」を眺めながら、「あれはなんだろう? 」と考え込んでいた。。。

背中に哀愁を漂わせている場合じゃないぞ、デーモン部長!
2004/2/24

今日の電撃ニュース「山之内製薬と藤沢薬品合併」について、みんなが話題にしていた。


ヨネヤマ「合併の場合、工場はどうなると思う?」

十条「やっぱり減らす方向にあるでしょうね。」

ヨネヤマ「でも、モノによっては特殊な加工が必要で、その機械やラインが無いとやっていけないというのもある。」

十条「そうですね、そんなものはそれごと持っていくんでしょうね。」

ヨネヤマ「そうなると、またバリデーションのやり直しか・・・」

十条「是非、減らされるほうじゃない会社側にいたいですね。(笑)」


ちゃちゃ「基礎部門も、減らされる方向になるよ。」

るみ子の酒「ですよね〜〜。ダブって持っていてもしょうがない機材なんかもあるでしょうしね。」

ちゃちゃ「シーズだけは残るな。人が減ったとしても。」

るみ子の酒「言ってみれば、人間よりも、そっちのほうが欲しいくらいですからね。パイプラインの充実ということで。」

ちゃちゃ「まったく、おちおちと研究に没頭できないぜ。」


こさめ「QCの担当だって油断ならないわ。モニターは人数が多いに越したことないけれどね。」

BECK
「そんなことないっすよ。いきなり、この治験はもう中断なんてことも有り得ますからね。」


デーモン山田「・・・ん? どうしたの、みんな、深刻な顔しちゃって!え! ヨネヤマちゃん、眉間にしわ寄っているよ。どう? アイスクリーム買ってきたから、みんなで食べて、頭を冷やそうよ。 ほら、これおいしいよ、ナッツとレーズンをトッピングしたアイス、どう? るみ子の酒ちゃん!」


デーモン山田にとっては、アイスのトッピングの組み合わせのほうが、製薬会社の組み合わせよりも気になるらしい。。。
2004/2/25

マラリア原虫由来の「免疫抑制剤」(開発コード)「HORAI-SAS10804」はリウマチに効果がありそうだということで、今年初期にヒトで初めて試す第1相臨床試験(Phase-I)には入りたいところだった。
しかし、先日、あるメーカーのリウマチ薬で重篤な副作用が報告された。
そこで、当社でも非臨床試験を見直している。・・・・・・というのが、2月2日までの報告。


結局、こちらで開発している「免疫抑制剤」(開発コード)「HORAI-SAS10804」と先日の別メーカーのリウマチ薬とは作用機序が違い、過去の動物実験の記録も見直したが、間質性肺炎の副作用がなさそうだということが、ちゃちゃとるみ子の酒から報告された。

また、ハレ〜からの報告によれば、ヨネヤマ、十条たちの製造部門の準備も完了し、製品標準書、品質管理手順書、製造管理手順書等も全て揃って、いつでも製造ができるとのことだった。

Phase-T施設の選定も済み、医薬品機構に届け出る「治験届」書類一式も用意ができた。

まずは、予定しているプロトコルの案でいけるかどうか、機構の「治験相談」にあたることにした

JOYママに相談日を予約してもらった。

このPhase-Tには、臨床部門の担当としては、ヘンリー川崎とみっちーK が担当することになった。

なんとか、今年中にPhase-Tの「単回投与」、「連続投与」を終了したい。


(ちなみに、僕(ホーライ)が創作した人物の中では、最近「デーモン山田」が気に入っている^^)
2004/2/26
マラリア原虫由来の「免疫抑制剤」(開発コード)「HORAI-SAS10804」正式名称:ホーライ、さっさとやれよ)のプロトコール案と開発プランを持ち、機構へ相談に行くことになった。


担当官A「これはリウマチの薬として開発するようですが、例の副作用はどうなんですか?」

るみ子の酒「はい、今までの非臨床試験の結果からは特に間質性肺炎が副作用として疑われることはありません。」

担当官B「その他の副作用はどうでしょう?」

るみ子の酒「この概要書の表に上げてあるとおりです。」

担当官B「結核に対しての安全性対策は?」

ヘンリー川崎「はい、プロトコルの選択基準、除外基準で絞込み、さらに治験薬投与中に***について血中濃度検査と***検査を2週間に1回やることにしています。」

担当官A「といことは、市販後もその検査を義務付けるということですか?」

ヘンリー川崎「いえ、それは今後の治験を通して安全性が確認できれば、検査期間の延長、あるいは廃止も検討していく予定です。」

担当官B「それは、どのフェーズで?」

ヘンリー川崎「フェーズ2以降からフェーズ3にかけてです。」

担当官A「分かりました。例の会社の副作用の件もありますので、その点だけは注意して治験計画を立ててください。」


・・・・・・というようなやり取りがあり、概ね、今後の開発計画と治験について、両者で話し合いがついたが、ヘンリー川崎としては、フェーズ2が終わったところで、もう一度、この件については、治験相談にかけるべきだな、と心の中で思った。


その頃、会社ではデーモン山田が社長秘書に聞いていた。

デーモン山田「ねぇ、ねぇ、この際さ、どさくさにまぎれて、この会社も山之内と藤沢に吸収してもらうという案はどうかな? ホーライ社長いない?」

社長秘書「どうですかね。。。何がメリットありますか?」

デーモン山田「うん。カコナールとプレコールが安く買える。ね!」

社長秘書山田部長でも、風邪引くことあるんですか〜〜〜〜?

デーモン山田「・・・で、社長は?」

社長秘書「きっと、今ごろはヤフーのニュース検索をして、今日のブロッグのネタを探しているころですよ。」


・・・あたり!
2004/2/29
先日、治験相談を終えた「免疫抑制剤」(開発コード)「HORAI-SAS10804」の、日本で初めて人に投与するPhase-Tについて、社内IRBに諮ることになった。

説明に立つのは、みっちーKだった。ヘンリー川崎は会議室の後ろでみっちーKをサポートすることになった。


みっちーK「・・・というのが、今回の治験の概略です。」

IRB委員長(管理人さん)「さて、委員の皆さん、ご質問はありますかな?」

フロリス「あの、『同意説明文書』に治験に参加される方への謝礼のことが書いてありますね?」

みっちーK「はい、あります。」

フロリス「その項目の3行目に『治験に参加された期間に応じて、謝礼は按分されます』と書いてありますが、この意味がよく分かりません。」

みっちーK「あ、それは、例えば治験期間が今回は3日間ですが、もし1日目で治験を辞退したいといった被験者さんや、副作用などで途中で治験を中止された方には、1日目まで参加された分の謝礼を払うという意味です。」

社長秘書「どうして、そんなルールになっているんですか? それは当社だけのルールですか?それともGCPで決まっているとか?」

みっちーK「はい、これは答申GCP(4-2-10)で規定されています。最後まで治験に参加しないと、謝礼が全く貰えないとなると、被験者さんが、副作用を隠してでも、最後まで参加しようとするといけないからです。倫理的な面や安全性を考慮して、そうなっています。」

フロリス「なるほど、その意味は分かりました。でも、説明を聞かないと分かりにくいですね。図にして表現するなどして、一般の方にも理解しやすいようにしたほうがいいと思います。」

みっちーK「分かりました。そのように改善したいと思います。」


・・・ということで、ホーライ製薬でも社内IRBが始まった。 →(社内IRBメンバー

みっちーKも成長したな」と思うヘンリー川崎の横でデーモン部長はかすかな寝息を立てていた。。。

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